竹野 優美 「遠いまなざし」
2023 4.1(Sat)-4.29(Sat)
(月曜、火曜、水曜定休 11:30-18:00)
過去に向かう「遠いまなざし」というのがある。人間だけに見られる表情であろう。
何十年ぶりかで母校の校庭に立つ。目に映る一木一草に無数の想いがこもる。
「いまのここ」に「かつてのかなた」が二重で映し出されたのであろう。
三木成夫(1983) 「胎児の世界」中央公論新社
去年の4月から移住をして、小松石が採石される神奈川県真鶴町の石屋で働き始めました。
石を研磨したり、割って加工する仕事を繰り返す日々のなかで、ふと石の表情が、
白波を立てる水面や、木の生い茂る山林のように見えることがありました。
その見間違いの風景のなかに、船や民家が現れはじめ、真鶴の港町の景色が石のなかに見えたとき、
思い出したのは、三木成夫の一節でした。
いまも続く石文化がある真鶴町は海辺を歩くとはるか昔、
船で石を運ぶために岩場を切り出した痕跡が見られたり、土地の記憶を感じることができます。
こうした過去の時間やいまも変わらない海の景色の表情、
続いていく日々の営みの時間を写し出すような作品をつくれないか考えました。
真鶴でいまも採石される、小松石は20万年前に箱根火山活動と連動して
噴火した溶岩が固まったものです。
作品ではその小松石を使用し、真鶴の景色の写真を転写することで
「いまのここ」「かつてのかなた」を写し出しています。
竹野優美
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