下原 亜矢 「AM I THERE ?」
2023 5.4(Thu)-5.21(Sun)
(月曜、火曜、水曜定休 11:30-18:00)
Index Finger Paintingでは、スマートフォン等のデジタルデバイスを模した支持体に、
おそらく多くの人がそれら機器を操作する際に駆使するであろう人差し指だけを使って
ペインティングした作品を制作しています。
人々が毎日、人差し指の操作を通して描く軌跡は、無意識ながら何かしらの痕跡を残す
行為だと考えます。あえて身体の限界性に拘り、無機質でありながら人々の生活の象徴である
スマートフォンやタブレットに、絵具の物質性や指が残す軌跡の生々しさを残そうと試みました。
また、スマートフォンやタブレットを実際のサイズから巨大化させた際の拡大率に合わせて、
自分自身の人差し指も3Dデータ、3Dプリンターを使用して拡大したモデルを生成。
巨大化した指ツールにピグメントを付けて、スワイプやタップの動作を意識して描画しています。
描くモチーフは主に、インターネット上でみた「誰か(Someone)」「どこか(Somewhere)」
または、「抽象(Spur)」です。
一方、mirroringシリーズではその名の通り、ミラー塗装を駆使しています。
現代のインフラ「インターネット」における、オンライン上での営みから浮き彫りとなる、
「自己と他者の関係性」と、相反する感情を同時に抱く「アンビバレント性」をメインテーマ
に鏡を用いて表現するミラーリングシリーズ。
自分自身を映し出し、それを他者へ共有するセルフィーの構図と鏡は、“自己と他者の関係性”を
メタ的に捉えています。SNSやオンライン上での営みに時折気持ち悪さを感じることがあります。
これは、他者の言動に自分自身を強制的に「可視化」させられているからではないだろうか?
「他者は自分を映す鏡」、とはよく言ったもので、たとえ他者の意見や行動だとしても、それに対して
自分自身はどう思うのかジャッジを受けているような感覚があります。多様性が叫ばれる世の中になり、
多種多様な価値や意見が受け入れられるようになってきたことは好ましい事であるが、同時に
「あなたはどう思う?」と常に自分自身への内省を求められている気がします。
私の作品は覗き込むと鏡に鑑賞者が映し出され、強制的に自分自身を確認させられますが、この仕組み
はまさに、強制的に「あなたはどうなの?」と問いかける現代社会を表現しています。
顔が覆われてレイヤー化した様は、セルフィーという本来ならば自己顕示欲を満たす行為とは裏腹な
匿名性を表し、相反する感情を同時に抱く行為は人間特有のヒューマニティであり、昨今これが強く
映し出されていると感じます。
たとえ目に見えているものがデジタル化され無機質なものとなっても、文明が発達すればするほ
ど人の生々しさは色味を増すように思います。
これまでリアルな鏡を使用したシリーズを作成してきましたが、ポートレート(ペインティング)
と一体感をもたらすために今回の作品は塗料のみで鏡を再現しています。他者と自分の境界線がボケて
一体化している様をより明確に表現したいと思っています。
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